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2010年12月19日 (日)

「8割の基本条例は間違っている」

■昨晩は公民館連続講座(6回)の最終回。「自治基本条例とは何か」を担当した自治体法務のプロ・石井秀一氏(自治体総合政策研究所)が約40人の受講者を前に大いに吠えた。石井秀一といっても全国的には無名に近い。というのもH県の法務担当や民間企業コンサルを経て現在のシンクタンクを立ち上げてまだ5年という、云わばこの業界では新参者だからである。私もこの自治体総合研究所のHPを発見したのもほぼ1年前だった。

■その石井さんという研究者の「歯切れの良さ」は学閥(や師弟関係)と無縁な一匹狼(?)であることと、ナンと云っても法制執務(自治体)の現場を知っているから美辞麗句なしのリアリズムで問題を切開してくれるからである。だから「わかり易い」のである。それは「(現在150ほど)制定済みの7~8割の基本条例が『市民の定義』を間違えている」「その原因はまちづくり条例との混同にある」とのショッキングかつ一見ネガティブな問題提起から始まる。

■その厳しい指摘の背景には2000年地方分権改革(地方分権一括法)に対する視野の広い分析がある。それは「改正自治法第一条の2」の「自治体と国の役割分担明確化」「地域における総合的な行政主体」とは「地方政府の誕生」であり、「団体自治」の強化だったが「住民自治」は改革されなかった。ナゼか?「自治体(政府)の形態、組織を住民自らが決定できることが真の地方自治」なのに「地方自治法の中央集権性(の残存を望む勢力)」がそれを許さなかったのである。その端的な例が地方議会への「請願」「陳情」(主権者を忘れた上から目線)などの言葉にあると説く。

■その住民自治を描ききれていない「未だ不備な法である地方自治法」だから「地方自治基本法」(神奈川県など)への希求がなされてきた(し、現在民主党政権下での「地方政府基本法」(原口プラン)制定への動きなのである)。「自治体の組織や運営の基本的なルールを住民が自己決定できる」って云えばアメリカの「ホームルールチャーター制度」が典型であり、例えば公選法上の制約を越えて首長・議員選挙権を18歳以上とするなどの事が可能となるような自治体運営条例(自治基本条例)の制定権を「授権」(法的根拠)させることがその(地方自治基本法)考え方であると続く。

■それではそうした基本法が整備されなければ「自治基本条例」は制定できないのだろうか?それは逆である。「自治基本条例の『立法事実』(制定の根拠)は、2000年の改正地方自治法の施行により生じている。立法者の裁量をすでに越えて『法の欠缺(けつ?)』状態にある」として「自治基本条例が自治体の根本法であり、憲法である以上、10年もの年月の徒過は職務懈怠(けたい)として、不作為による違法として、国家賠償法に基づく訴訟が提起される要件を具備」しているとショッキングな警告を発したのです。

■さて、「立法事実は明白であり、すでに法の欠缺状態にある」の「欠缺」は「けっけつ」と読むのか「けっこん」と読むのかを含めて、石井先生にもう少し説明を聞かなければ充分な理解とは行かないのですが、そこまではっきりスッキリ自治基本条例制定を提言した学者を知らない。さてここまでが「石井ショック」の2例目ですが、それでは最初に触れた「まちづくり条例との混同」なき「自治基本条例」の本質とはナニかについては「自治基本条例は、憲法同様、信託関係を明らかにし、権力を付与される者(政府)に、信託条項の一覧表(それが自治基本条例)に基づいて行動することを命令するもの」であり、その「信託論」(松下圭一・二重信託論)の思想への理解を大前提とする。

■「まちづくり条例との混同批判」はさらにそこで流布(流行)している「協働のまちづくり」の「協働」概念への徹底批判へと続く。「基本条例は主権者とその信託相手(機構)の関係を律するもの」なのであって、住民以外(通勤・通学者・企業・NPO)の者の登場はアリエナイとする。これはナットクできる。ただしその延長線上で「新しい公共」や「その担い手としてのNPOと市民社会論」は「行政のアウトソーシングの範疇」「学者の机上論」とバッサリ切って捨てられるとワタシラ10年NPOを実践してきた者として内心穏やかではない(とユーカ正直いってココだけは消化不良)。

■講義のあとの質疑応答で、その「協働論批判」と関連して、私から「平成15年以来狛江では「市民参加・協働条例」を推進してきたが『参加疲れ』『協働疲れ』にあることは間違いない。だから行政はその『参加・協働条例の見直しの際に自治体運営の基本ルールの検討に入ります』(22年3月基本計画)としているが、参加・協働(概念?路線?)の延長線上では「自治基本条例」のステージは見えて来ないですよね」と念を押したのは、行政への(議会は対象外)参加という限定つきで、かつ主権者概念がアイマイだから上から目線でしかない当該条例をその範囲で色々修正しようとしてもムダであり、やはり「信託関係と代行機構の覚醒」(石井)をもたらす自治基本条例のステージを設定したのち下位条例として見直す手順が妥当ということだけは確認しておきたかったからでした。

■いやはや、とりあえず「石井講座」をワタシ的に勝手に(しかもピンポイントで)解釈してみました。何度も言いますが「自治体総合政策研究所」のサイトをじっくりご覧あれ。石井さんご苦労様でした。さて、私達狛江市民は池上洋通、大和田一紘、辻山幸宣、石井秀一の4人の講座を受講することで「自治体の憲法=自治基本条例とは何か」について本格的に学習・議論する価値のあるテーマであることを発見したと言えます。公民館関係者、講座を企画した皆さんにあらためて感謝いたします。明日(12月20日夜)は講座受講者の交流会が持たれます。できれば「自主グループ」の発足へと進めば良いですよね。

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