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2011年2月

2011年2月 1日 (火)

貧困すぎる狛江市生活保護行政

■昨晩(1月31日)生活保護担当課(生活支援課)とこまえ派遣村の「懇談会」を行った。メンバーは派遣村世話人3名VS課長、査察指導員の2名である。昨年末の資料提供(狛江市の生活保護に関する基礎的資料に加え、自立支援プログラムの実施状況等)に関する疑問点へのレクチャーと、とりわけ「自立支援プログラム」をめぐる論点を整理し、「派遣村」と行政の連携を模索することが主な狙いだった。

■狛江市の生活保護行政の現場はソーシャルワーカー=ケースワーカー(CW)8名(その内嘱託職員2名)でありその仕事を指導統括する「査察指導員」そして課長の指揮の下にある。国の基準はCWあたり80世帯とあるが、現在正規CWは104世帯を担当しているので過重労働となっているとのこと。被保護世帯は平成20年643世帯(10.7‰)から平成22年753世帯(12.3‰)と相変わらずウナギ登りである。(ちなみに平成12年は333世帯)

■問題は保護率以外に「申請率」にある。申請率とは窓口に相談に来た要保護者数に対して生活保護申請を受け付けた数である。(さらに申請を受け付けて保護を決定した「開始率」もあるが)ナゼか?そこで「水際作戦」(悪名高いのが北九州市)の度合いがある程度わかるからである。ちなみに2008年で釧路市58%、東京都46%、富山市27%などである(「ルポ生活保護」)しかし狛江市ではナゼかこれをカウントしていないのである。

■「相談件数はカウントしているが、一人の相談者が何度も相談に来るので申請件数との対比はしていない」などワケがわからない理屈だった。現に私達は「狛江では受け付けない」と追い返された路上生活者の報告を聞いているし、そもそも派遣村が路上生活者等の生保申請を促すことを困ったことのように嘆いている支援課の雰囲気そのものが「水際作戦」そのものである。

■もうひとつ「派遣村」の党是(!?)である「直アパ」の論理が暴く、生保行政の「貧困ビジネス」(無料低額宿泊所)との「同伴」問題だが現在16名が「スリーエス」(狛江荘には2名)と「グッドライフ」(調布等)に収容されていることが判明した。緊急避難のための生活保護施設が市域にない状況からそれら無料低額宿泊所の活用を全否定するつもりはないが、自立支援に結びつかないピンハネの貧困ビジネスに丸投げし、結局は保護費の濫用になっていることを相変わらず狛江市は自覚していない。

■だからこそワタシラが問題にしているのが、懸案の「自立支援プログラム」である。そもそも「自立支援プログラムとは?」については厚労省のサイト以外に「ルポ生活保護」(本田良一・中公新書)が釧路市モデルを、「自立支援プログラムの構築」(板橋区・首都大学共編・ぎょうせい)で板橋区モデルを詳細にレポートしている。一口に言えば、稼動年齢層を含めて、急増する生活保護に対する抜本対策として平成17年の厚生労働省の通知で開始されたのが「自立支援プログラム」である。

■それは、それまでの援助指導の中心だった就労(経済的)自立(による保護廃止)のみでは効果薄であり、「日常生活自立」「社会生活自立」という総合的対策によって初めて要保護者の効果的な生活再建と財政負担の軽減につながるというものである。ウーム、ご理解いただくために、ここで釧路市のHPからコピーしておきます。

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釧路市自立支援プログラムの取り組み状況
≪目的≫
生活保護受給者の「自立」をエンパワーメントの視点で地域資源と共に「支援」することを目的としています。
≪内容≫
受給者の自尊意識を回復させるため、中間的就労として地域のNPO等各事業者と協力し、有償・無償のボランティア活動等を通じ受給者の居場所づくりに取り組んでいます。
こうしたことをきっかけに新たな就業の場の発掘につながったり、再就職の道が開けたり、その人なりの自立した生活が営めることを目指しています。
≪釧路市の自立支援プログラムは・・・・・≫
A「就労支援プログラム」
B「就業体験的ボランティアプログラム」
C「就業体験プログラム」
D「日常生活意欲向上支援プログラム」
E「その他のプログラム」
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■さて、そこで狛江市の自立支援プログラムですが、結論は「就労支援プログラム」(「就労支援相談員支援プログラム」「生保受給者等就労支援事業適用プログラム」「就労意欲形成プログラム」で構成されている)しか行っていないという遅れた状況なのです。ちなみに板橋区では16のプログラムを実施し、きめ細かな多様な支援によって「社会福祉法の理念に立ち戻り社会福祉サービス利用者が主体的に選び取る自立」としています。

■その狛江市就労支援プログラムの21年度実績はプログラム登録者として57名。その内、就労(廃止には至らないが部分的な就労)47名、生保廃止(安定就労による経済自立)10名である。約千人(757世帯)のうち就労可能な被保護者(稼動能力のある「その他世帯」)が約100人として、その内廃止が10名という数字の、この評価はさしあたりモノサシがないのでわからないが、ともかく「目に見える成果がこの就労支援だ」というのが現場の声だと言う。

■参考までに、狛江市基本計画では施策成果目標として「自立による生保廃止した稼動年齢層のいる世帯数:平成22年度~26年度までに55世帯分」としている。現状の水準を維持するだけの極めてヤル気のない目標値であり、かつ「就労支援=経済自立=生保廃止=保護費縮減」いう従来型発想そのままであり、そもそも「生活自立」「社会的自立」を含めた「自立支援プログラム」の開発に関心がないことがここでもわかる。(これってサボタージュ?勉強不足?)

■ワタシ的に前から気になっていたのが、狛江市のケースワーカー達の被保護者への『上から目線』である。従来型の経済自立=生保廃止が目標になっていることに加え、「惰眠防止」(自立したがらない被保護者を指導)の観念に囚われ過ぎているのではないか。極論は「生活保護が自立を妨げている元凶!」となる。(それを言ったらオシマイだよね)こうした感性からは、生活保護につきまとう「スティグマ」(恥辱意識)からの解放は見えてこないし、被保護者のエンパワーメントとしての自立という発想にも立てない。はたまたソーシャルワークとしての自分たちの仕事は一体ナンなのかとなる。

■もう一度釧路市のHPを見ていただく。-『受給者の自尊意識を回復させるため、中間的就労として地域のNPO等各事業者と協力し、有償・無償のボランティア活動等を通じ受給者の居場所づくりに取り組んでいます』-これこそ「生活保護行政の静かなる革命」と言われる自立支援プログラムのモデルだと考えたい。懇談会の最後は「こまえ派遣村の基盤が強固なものとなること(正式発足)を待って、自立支援プログラムの拡充や連携関係・役割分担の検討に入れると良いですね」と互いに確認し終了した。


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