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2011年7月18日 (月)

「政策法務不在の狛江市」

■前述の神原私案「総合計画等」ではその策定にあたって8項目(市民委員会設置や計画期間等)にわたる要件を課していましたが、「財政運営」の項では「財政情報作成公表」「財政健全化計画策定」が明示されています。その財政情報の公表では「連結決算と財務諸表の作成」が前提とされ、「分かりやすい予算書、決算書」としては特に「政策説明個票」(「政策の目的、実施機関、市民参加の内容、他自治体の類似政策の検討、総合計画との関係、財源の構成、維持管理及び事業採算の予測等の事項を記載する」)の公開を義務付けしていることが特徴のようです。

■これに対して、Kさんから、狛江市には「『財政事情』の作成及び公表に関する条例」があるが自治法で定められている年2回の公表を条例化したものであり、また「狛江市予算事務規則」も「最小の経費で最大の効果」や「厳正な収入の確保」等(当然のこと)を謳ったものであり、神原私案にあるような当該自治体としての財政運営の基本原則を定めた条例等は見つからないとし、神原私案の「政策説明個票」には特に注目したいですね、と報告がありました。

■「政策説明個票」とはどのようなものでしょうね?狛江市にも「事務事業カルテ」などあるが、事務事業評価のためという目的は違うけど類似のツールですよねなどの意見交換があり、政策個票に記載する8項目って「ニセコ町基本条例」の計画策定にあたっての情報提供原則6項目とほぼ同じ内容であることも確認しました。

■なお、財政運営のルールに関しては「多治見市財政条例」が有名ですが、もはや、国・総務省の「財政破綻法制」などの財政基準に振り廻されたりするのでなく、自治体の独自基準により、財政規律をコントロールする時代だということですよね。狛江市でも中長期の財政計画策定などが(自治基本条例の中身としても)求められているということになりますよねと私の方から述べました。

■次の課題は「法務体制」です。神原私案は「市は、自主的で質の高い政策を実行するため、次に掲げる法務に関する行政の体制を充実しなければならない」として「①条例、規則の制定等の自治立法を積極的に行うこと(立法法務)②日本国憲法、法令等を自主的に解釈し、運用すること(運用法務)③提訴、応訴等訴訟に的確に対応すること(訴訟法務)④国に法令等の制定改廃を提言すること(改革法務)⑤法に関する情報及び技術の提供の観点から市民の立法活動を支援すること(支援法務)」を提示しています。

■さて皆様、今日の「自治体法務(行政)」とは、この5つの分類に整理され「政策法務」と呼ばれているっていうことをご存知でしたでしょうか?まさに分権時代の地方政府として標準装備されなければならない能力ということなのでしょうが、残念ながら狛江市の職員や議員を含めてこの政策法務の意味を理解している方とほとんど出合ったことがありません。ましてや一般市民にとっては元々「法務」なる領域は奥の院のハナシですから、そう云うワケで研究会参加者も含めて、初めて「政策法務」との出会いの方も少なくありませんでした。(ちなみに「政策法務と何か」についてはネットで検索していただければ様々な論考が見えます)

■それを裏付けるように、Kさんの調査によれば狛江市例規集に「法務」をタイトルとした条例等はなく、唯一「狛江市組織規則」の政策室・企画法制担当の分掌事務の中に、「13、政策に関する法的調査及び研究に関すること」とある程度だということであり、「こうして見ると、神原私案の言う「法務体制」は狛江市にはないと言える」と断言しました。(ちなみに前期基本計画の34P「組織体制の確立と人材育成」では「職員の政策法務能力や企画立案能力の向上」と人材育成に関って触れられています。~参考までにこれは策定時の委員だった清水の文案です~)

■さらにKさんは「例えば」として「航空計器跡地巨大マンション問題」での住民側の都市計画変更要求(高さ制限)をめぐる業者側の損賠訴訟対策との関係や、「旧第4小学校跡地問題」の「都市計画上、教育施設にしか活用できないか否か」の約10年の迷走などは「法務体制」が整っていれば無駄な議論を繰り返さずとも良かったのではないかと述べました。(現に、2000年地方分権一括法以来、対等の政府間関係となったと言われる現在でも、法制度解釈を日常的に、国や東京都に「お伺いする」実態が狛江市の風土ではないですかと、元自治体職員のKさんがリアルな内輪話もされていました)これには参加者もナットクの様子でした。

■ところで、法務能力が問われているのは議会も同じ、と言うか議会こそ「立法法務」担当者を議会事務局に置かなければなりませんよねとの石井先生の発言。これに続けて、Yさんからは「そもそも、(二元代表制と言いながら)立法府である議会の職員人事権が市長にあるってオカシイですよね(など行政府の支配下にある地方議会)」と言う根源的な問題提起が出ると、他の方からは、そう云えばそもそも教育委員会の独立性ってナンなのよ、などハナシが拡散するので、進行係としては少し軌道修正を図り、イズレニセヨ「政策法務の不在」が狛江市の課題解決や政策開発能力の障害となっていることには間違いないですよねとその場を収めたのでした。

■ってユーカ。国で云えば国家戦略の「総合計画」の制度設計も、右肩下がり(縮小)時代の財政運営のルール化も、PDCAサイクルと云われる自治体経営のための政策評価制度も、自治体政府の根幹の制度であり、これらを積極的に立法化(条例提案)し、市民の代表機関である議会の議決を得ることは、説明責任を果すことでもあり、これらの制度の正統性も確保されますよね。市民による市政への信託範囲は、条例に基づかない行政活動を許容しないはずでもあり、条例化が一向に進んでない狛江市の政策法務の不在こそが大いなる問題だと云わなければならないのですよね。ウーム、石井先生、ナニか言葉の使い方を含めて間違っていたら是非ご指摘下さい。お願いします。(政策評価の項は省略します)

■自治基本条例研究会の日程のお知らせです。(8月19日を追加)
★第7回研究会 7月22日(金)午後6時半~第2会議室
 「行政組織と職員政策」
★第8回研究会 8月12日(金)午後6時半~第2会議室
 「議会と議員活動の原則」
★第9回研究会 8月19日(金)午後6時半~第3会議室
 「コンプライアンス」「市民等の責務」「最高規範性」
★第10回研究会 8月26日(金)午後6時半~講座室
 「狛江市参加協働条例改正案を考える」

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コメント

 自治体総合政策研究所の石井です。
 特に私の方から申し上げることはありません。いつもの清水節でよいのではと思っています。また、神原私案と市の制度等の比較をしていく手法は、狛江市にふさわしい、オリジナリティのある自治基本条例を制定するために、大変よろしいことだと思います。
 ところで、財政について、若干補足しておきますと、前回の研究会で、国の通知による新公会計制度の導入が全自治体で整備されたことについては説明しました。
 そういう意味では、神原私案の「市の財政診断に必要な財務諸表を作成する」という点は、形式的にはほぼ達成したのではないでしょうか。しかし、この制度を市の財政診断として実際にどのように運用していくのかという点については、これからの課題であり、分かりやすい予算書、決算書などはまだまだというところではないかと思います。
 このようなツールを駆使して財政を分析し、無駄な歳出を削減していくことは、これから重要なことですが、もう一つ、前回の研究会でも若干触れましたが、歳入(市の収入)の拡充について真剣に考える必要があると思います。広告事業(バナー広告など)、インターネット公売(差押え財産)、命名権、未活用地や建物の売却・貸付等、売電事業(ソーラー、風力)、観光事業など自治体の独自性の中からこうした事業の展開が求められています。
 人口減少、景気の低迷など、年々、税収減の傾向にある自治体にとって、新たな歳入の道を開拓することは重要となってきています。神原私案も第5項で「新税の導入」、「私有財産の活用等」の検討を求めています。
 さて、せっかくの研究会の結果を生かすために、神原私案と市の制度比較を対比表の形で整理して、不備な点や問題点などを一緒に書き込んではどうでしょうか。少し手間がかかりますが、その成果物は、自治基本条例づくりの貴重な資料となると思います。

投稿: 石井(自治体総合政策研究所) | 2011年7月20日 (水) 04時18分

まったく本文と関係ありませんが、いつの間にか、あれだけ仲良く
じゃれ合っていた市原氏とは、袂を分っていたのですね。(貴方が民主に擦り寄ったことで)

貴方の方はもう市議ではありませんので、一市民からどうのこうのと言うことはありませんが、狛江市というちっぽけなコップの中で、地方自治ごっごするのは、迷惑(=税金の無駄)なので止めて欲しいものですな。

このような状況を見ると、早く調布市なり世田谷区なりに吸収合併してもらえないかと考えてしまいますよ。

投稿: 一市民 | 2011年7月21日 (木) 00時38分

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