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2011年8月23日 (火)

「市民の責務」規定はいらない!

■22日ブログの続きです。神原私案「第9章市民、市長、議員及び職員の責務」に関してですが、報告者のYさんも悩んだ末「神原私案と他市(自治基本条例)比較」を作成し、議論の題材としました。というのも狛江市の条例・規則に神原私案に該当する「責務」規定は各政策条例に散見するものの、当該政策領域に限定されるものであり、比較しようがないからでした。

■その各市比較は小平市、多摩市、三鷹市、杉並区の自治基本条例でした。市長や議員、職員の責務については省略しますが、「市民の責務」では「納税の義務」に関するもの、「まちづくり」や市民相互の「連帯」、「地域社会の発展への貢献」等でした。

■ところで、神原私案では市民の責務を「第39条 市民は、この条例を定める知る権利及び参加の権利等を行使して、社会における連帯意識と公共心を培い、もって基本的人権の尊重のうちに互いが共和する豊かなまちづくりに貢献する責務を有する」と書いてあります。議論の中で、そもそもそれぞれの責務規定を集約して、章立てにした意図はどこにあるのですかね?との疑問も発せられました。

■当日は時間もなく、これもアト出しジャンケンのようなハナシで申し訳ありませんが、そもそも「市民の責務」を基本条例に書き込むこと自体への疑問がムクムクと湧いてきました。それは昨年の公民館講座での二人の講師のハナシを思い出したからでした。

■さて、その第一は池上洋通講師の憲法講座です。学習記録38ページの中段に「さて、国民と憲法の関係では、立憲主義というのを次にように理解することが大切。国民が憲法に支配されるのではなく、国民が書いた憲法を、権力を握る者に与えて、このように働きなさいというのが憲法。これが肝心である。みなさんは、まちの憲法をつくると考えて『自治基本条例』をつくろうとしておられるようだが、それは公務員に対する命令文書でなければならない。「市民の義務」なんて書いたらダメですよ。市民を支配するためにつくるものではない。この根本を忘れると訳のわからないものになってしまう。」とあります。

■次に、石井秀一講師もほぼ同様な見解を示した上で、さらに「『市民の責務』規定は必要なのか」と詳しく論文を提供して頂いております。それは自治総合政策研究所のサイトの「自治基本条例読本-その15-」に書かれているものです。詳しくは是非《自総研http://www.jisouken.com》にアクセスしていただきたいのですが、その核心部分のみ転載させていただきます。

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③憲法における三大義務は不要な規定
『このように、現憲法の国民の三大義務は、そもそも最初のGHQの憲法草案にはありませんでした。憲法原理は、「国民主権」に大転換したにもかかわらず、当時の政府や官僚は国体護持をはじめ旧来の大日本帝国憲法の考えを引きずりながら、その趣旨を新憲法にふさわしくない形で残してしまったということです。
そもそも、主権者である国民が代表機構(行政、議会)に命令することを書くべき憲法に「国民の義務」を規定するということ自体が誤っているといわざるを得ません。憲法は国民が守るというよりは、むしろ国民が国家(政府)に守らせるべき法なのです。
前述したとおり、(国民全てではない )保護者の「教育を受けさせる義務」は、憲法ではなく、教育基本法など下位の法律において定めるべきものです。それより、むしろ国にこそ、子どもの教育に責任があり、「教育を受けさせる義務」があるのです。
そして、「勤労の義務」については、「国民は、誰に対して勤労する義務があるのか」という問いに答えられない意味不明な文言であり、また、「納税の義務」は、国民主権となったにもかかわらず、「臣民の義務」としての「納税」の観念を引きずるなど、大日本帝国憲法下の国民の二大義務を、結局継承した形となっているのです。
どれをとっても、憲法改正時には不要な規定として改正されるべきものだといえます。』
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■これだけでは要領をえないかもしれませんが、憲法上の三大義務規定の誤りを完膚なきまでに指摘した上で、政府信託論として同じく、自治体政府の自治基本条例の上でも侵してならない間違いとして「市民責務規定」を述べています。神原私案の「市民の義務・責務規定」はかなり抑制的な書き方のような気がしますが、いずれにせよ誤解を招く「市民の責務規定」をあえて主権者市民の代行機関である市長や議員の責務と同列にして書き込むというスタイルには納得がいかないというのがワタシの意見です。自治基本条例(議会基本条例)の研究の第一人者と云われる神原勝教授のモデル案に対して、恐れ多いカン違いだったら良いのですが・・・。とりあえずの感想でした。

■今週も8月26日の金曜日午後6時半~講座室(中央公民館)にて第10回自治基本条例研究会を開催いたします。どなた様も自由に参加可能です。

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