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2011年8月28日 (日)

「最高法規性」とは何か?

■8月26日(金)は夕方から狛江でも集中豪雨でしたが、第10回自治基本条例研究会は10名が出席し開催されました。いよいよ最終章「最高規範性と見直し手続き等」というマニヤックな自治体法務理論にUさんが挑戦してくれました。自治基本条例が「自治体の憲法」と云われる根拠の1つがこの「最高規範性(法規性)」という法律概念ですよね。ざっくり云えば、自治体の憲法に値する条例構成を持ち、当該自治体の他の条例や国の法律等の解釈にあたり、この基本条例を基準にして判断することだと思います。

■ワタシラ素人が、憲法や地方自治法を理解し、法理論上誤りのない自治基本条例を構想できるのか、そのためには相当のトレーニングが必要になることを改めて実感したのがこの「最高法規性」でした。その原理を理解するためには私たちの共通テキストである「自治・議会基本条例論」(神原勝)と共に、自治体総合政策研究所(石井秀一)のサイトから政策研究レポート「自治基本条例の最高法規性」を読むことをお薦めします。というより石井論文まで読まないと「最高法規性」はおそらく理解できません。

■ちなみに、神原私案「第10章」は以下のとおりです。

第10章 最高規範性と見直し手続等

(最高規範性)
第43条 この条例は、市政運営における最高規範であって、市は、この条例に違反する
条例、規則の制定その他の行為をしてはならない。
2 市は、この条例に定める市政運営の基本理念及び基本原則に照らして、不断にその他の
条例、規則等の改廃に努める。
3 市は、日本国憲法、法律及び政令等を独自に解釈し、運用する場合も、この条例に照
らして、自主的かつ民主的に判断するよう努める。
(見直しの継続)
第44条 市は、この条例の施行から3年を越えない期間ごとに、市民、職員、市長及び議
員等が参加する検討機関を設置し、この条例が初期の目的を達成しているかどうかを検討する。
2 市は前項の規定に基づく検討の結果、制度の改善が必要な場合は、この条例の改正を含
めて適切な措置を講じる。
(市民投票手続)
第45条 この条例は前条に規定する見直しの手続を経て、適切な時期において、市民投票に付し、過半数の賛成を得て、あらためて承認するものとする。

■Uさんは、法律用語の多いその石井論説を分かり易く要約して、各市自治基本条例の最高法規性の要件から見たオリジナルな「分析一覧表」を作成して解説してくれました。ちなみに比較対象とした自治体はニセコ町、札幌市、杉並区、多摩市、三鷹市、小平市でした。さてUさんによる、その「最高法規性の要件」とは、「①特別な改定要件(議会の特別議決)を設ける、②住民の批准投票を実施する、③自治体運営の基本的事項(自治体の組織運営原則、市民と自治体との権利義務関係等)の規定(の有無)、④条例の体系化に関する規定、⑤自治基本条例の尊重・尊守義務に緘する規定、⑥最高性の宣言規定」に集約できるとしました。

■Uさんが石井論文を要約してくれたように、(もっとも36ページもの論文を私自身も読みこなせたとはいえませんが・・)基本は「(日本国)憲法の最高法規性」に関する考え方を踏襲したものですから、先ずはそこの理解が大前提となります。憲法の第96条の「改正手続き(硬性憲法)」第98条の「最高規範(憲法に反する法令は無効)」第97条「総則的規定(憲法の目的・基本的人権)」第99条「尊重擁護規定(他の法解釈基準・立法基準)」の理解、ついで憲法第8章「地方自治」(二種類の政府・二重信託論)や2000年地方分権一括法による改正自治法(主従から対等へ・地域における総合的な行政主体)の理解を踏まえて「自治基本条例の立法事実(成立根拠)とその最高法規性の担保が確認されるのだと教えていただきました。

■そこで各市自治基本条例の最高規範性構成要件の比較表に戻りますが、最もハードルが高いのが、①の「特別な改定要件」であることが分かります。これは神原私案を含めて全市が記述なしです。ついで②の「住民の批准投票」は神原私案のみに設定されています。あとの③から⑥までは一部欠落がありますが、おおむねの自治体で記述されています。そのこと(特別議決)についても石井論文が詳しく解説しています。

■憲法が「国会での3分の2議決と国民投票という改定要件」を備えているのに、ナゼ自治基本条例の「特別改定要件」に踏み込まないのかですが、現行地方自治法による「条例制定の議決要件と『特別の定め』規定」が障害になっていることがわかります。第116条「この法律に特別の定めがある場合を除く外、普通地方公共団体の議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる」とあり、その特別の定めとは「事務所の変更」「役員解職議決」「秘密会議決」「議員資格喪失」「議員の除名」「再議の議決」「長の不信任議決」「重要な公の施設廃止」であり、それ以外は3分の2議決などを用いることができないとの解釈があるからです。

■当日の研究会でもアレコレ議論しましたが、ナンデこんな余計なお世話の議決要件まで地方議会が縛られなければならないのか?それこそ「自治権の侵害」ではなかろうかとのハナシでした。神原私案比較で議会条項も議論してきましたが、すでに議員定数や議決事件範囲の自由化すら実施されたというのに、議決要件にこんな縛りがあることに唖然とせざるをえませんよね。一刻も早く自治法改正のテーブルに載ってほしものです。それはそうと現行法でも解釈次第で特別議決(特別な改定要件)は可能とする立場の研究者・自治体もあり(神奈川県自治総合研究センター等)今後の自治基本条例策定(改正)の課題であることは間違いありません。

■とりあえず議論の一端を紹介し、第10回研究会の感想・備忘録としますが、この日の後半には、「狛江市市民参加条例改正」の議論とどう向き合うかを議題としました。この件は又明日にでも振り返りますが「行政と一体となった」参加協働審議会への批判を書きます。次回以降の研究会日程は、第11回:9月2日(金)午後7時~第3会議室、第12回:9月9日(金)午後7時~第3会議室です。

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